厚真の家

オモテとウラでつながる2世帯
田畑に囲まれた敷地に建つ農家の2世帯住宅。
一般に農家住宅では、日常の出入りや客を迎える玄関は立派に造られるが、農作業の身支度や収穫物の貯蔵などに利用する勝手口は、狭くて暗い場合が多い。この農家住宅の〈表/裏〉とも言える玄関と勝手口を再解釈することが設計のコンセプトとなった。
2.73mグリッドに切妻の大屋根を載せたシンプルな構造で全体を形成し、中心で2分割することで世帯を分離している。内部は1階にLDKと水廻り、2階に寝室という構成とし、南東に玄関、北西に勝手口を配して、それぞれの出入口に大きな半外部空間(ポーチ)を設けた。世帯間で共有するこのポーチは、たとえば玄関側は家族で焼肉をしたり子どもが遊ぶなど生活の延長の場として、勝手口側は農作業の準備など仕事の場として利用することで、職住が近接した農家の暮らしが自ずとファサードに現れるとともに、分離した2世帯をつなげる路地のようなスペースとなっている。
農家住宅に特有の〈表/裏〉の出入口を等価に扱いつつ、2世帯住宅を統合する要素として半外部空間を積極的にデザインすることで、農村の風景に新鮮な佇まいを実現している。
用途
2世帯住宅
所在地
北海道勇払郡厚真町
敷地面積
1200.56m²(363.24坪)
建築面積
168.38m²(50.83坪)
延床面積
232.99m²(70.33坪)
設計
佐々木 夕介 関口 聡美
施工
株式会社 鈴木ホーム
撮影
古瀬 桂
掲載
北海道建築作品発表会作品集2021 Vol.41 / 日本建築学会北海道支部